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食道がんの予防・初期症状について(逆流性食道炎も関連して)

院長から

とんねるずの石橋貴明さんが食道がんで芸能活動を休止されたというニュースが飛び込んできました。

日本人の食道がんの原因は、昔からあるものと、最近問題になってきたものの、大きく分けて二種類があります。

昔から言われている食道がんの原因は、タバコやお酒が原因で、癌は食道の真ん中あたりにできます。タバコの煙の中にはアセトアルデヒドという物質が混ざっています。また。お酒が口の中に入ると、口の中の菌に分解されてアセトアルデヒドが合成されます。アセトアルデヒドは工場でよく使用されている物質ですが、保管には施錠が義務付けられており、排気装置も必要とされている物質で、危険と認識されています。日本人は多くの他の国々の人々と違って、アセトアルデヒドに弱い遺伝子を持っています。一説には、かつて日本でも流行していたマラリアに対抗するために有利だったからといわれていますが、その影響でお酒に弱かったり、アセトアルデヒドにさらされたときに癌を発症しやすかったりするようです。癌を起こすのは扁平上皮と呼ばれる、食道の一番内側の壁です。腫瘍マーカーとしてはSCCという検査方法が用いられます。

一方で、最近日本で問題になっている新しい食道がんは、腺上皮から作られ、腫瘍マーカーはCEAという検査方法になります。同じ食道にできてきますが、抗がん剤の種類や放射線治療の方針などは全く異なります。実は、日本では最近問題になってきていますが、欧米ではこちらの食道がんのほうが主流です。これは食道の出口のほう、つまり胃とのつなぎ目あたりにできてきます。そして、原因の多くが逆流性食道炎による慢性炎症であるといわれています。逆流性食道炎は、胃で作られる胃酸という消化液が食道へ逆流することで起きます。逆流性食道炎自体がこれまで日本で問題になりにくかった病気ですが、問題にならなかった理由は、日本人は胃酸の作られる量が少ない人が多かったのです。その原因はヘリコバクター・ピロリ菌の感染でした。かつてはほとんどの方が感染していたヘリコバクター・ピロリ菌ですが、近年の衛生環境の改善により、日本人の中で感染率が大きく下がりました。その結果、胃が健康になり、胃酸を作る能力が上がり、逆流性食道炎という新たな病気を起こしてしまったのです。胃酸にさらされ続けた食道は、本来の扁平上皮から腺上皮へ変化していきます。その変化は慢性の炎症で起きます。慢性の炎症は癌の発生母地になります。特に、腺上皮へ変化した範囲が広い方は要注意です。欧米では、腺上皮への変化が基準を超えて広がると、変化した部分を焼いてしまう治療まであります。日本人ではその基準の広さまで変化が広がることは少ないですが、逆流性食道炎を指摘されている方は、定期的な胃カメラで食道と胃のつなぎ目のところに変化がないか、確認をお勧めします。また、胃カメラを受けたときに逆流性食道炎の治療をしましょうと言われたら、症状がなくても治療したほうが良い状態ですので、医師から指示があるまで服薬を続けてください。

また、2019年現在の食道がんの罹患率は全がん種でみると、男性で第9位、女性では10位以下となっています(国立がん研究センターがん対策情報センターホームページ参照)。大方のがん腫と同様に、罹患者数は上昇しています。罹患者数の増加については、食道がんの診断能力向上が関連しているようで、より早期に治療に結び付く早期の例が増えてきているため、死亡率は低下してきています。では、食道がんは検査につながる自覚症状が出やすい腫瘍かというと、自覚症状がない方も多くあります。全国的に上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を受ける機会がある方が増え、特殊光観察などの内視鏡技術も向上し、より根治治療につながる例が増えているということだと思います。

 食道がんの一般的な症状は、しみる感じ、閊える感じ、飲み込めない、声がれ、咳、胸部痛といったものが挙げられます。そうした症状が出てきた食道がんは、すでに初期の段階を超えていることが多いです。食道がんは早期と診断できる条件が極めて厳しく、症状が出る前に見つけることが重要な腫瘍です。会社の健診などで年一回胃カメラを受ける機会がある方は、ぜひ受けることをお勧めします。早期の段階で食道がんを見つける能力は、透視検査(バリウム検査)よりも胃カメラが明らかに高いです。それでは、症状がない中で、どのような方が食道がんに注意しなければならないでしょう。食道がんの危険因子として有名なのは、飲酒と喫煙(酒とタバコ)です。アルコールやたばこの煙を飲み込む(副流煙も含みます)ことで食道に炎症が起き、発がんするといわれています。アルコールについては、飲むとすぐに赤くなる人、学生時代に鍛えて飲めるようになったというようなことをいう人は要注意です。残念ながら日本人の多くはアルコールを上手に分解することができません。アルコールを分解する過程でできる物質が、様々ながんの危険を上げているといわれ、食道がんも例外ではありません。タバコは自分で喫煙しない方も、家族や同僚が喫煙するその煙を吸い込むことで、食道に炎症を起こします。この考え方に基づくと、食道に炎症が起きる可能性のある人は定期的に胃カメラ検査を受けたほうが良いことになります。逆流性食道炎は、欧米では食道がん発症の一番の危険因子です。日本ではヘリコバクター・ピロリ菌の感染者が多かったことから胃酸分泌が少ない胃の方が多く、これまであまり問題視されてきませんでした。しかし、胃がんの危険因子になると判明したヘリコバクター・ピロリ菌を除菌する機会が増えたこと、衛生環境の改善からそもそも若い世代ではヘリコバクター・ピロリ菌に感染者が少なくなったことにより、日本でも今後、逆流性食道炎による食道がんが増加すると考えられ、適切な治療も重要です。そのほか熱い飲食物や香辛料も、食道に炎症を引き起こし、食道がんの危険性を上げることに繋がります。極端な嗜好は避け、時には食道の負担を取ってあげることも考えましょう。

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